アメリカのにおい

映画を5本も見ると思わなかった14時間のフライトを経て、JFKに降り立ったのは現地時間の午後1時。機体から出てすぐの連絡通路に、車椅子を用意して黄色のセーフティベストを着たグランドスタッフの列が見える。そうだった、そうだった、空港の警備員、清掃員はメキシコ系の人が多いんだったな。スペイン語なまりの英語もなんとなく耳が覚えている。

連絡通路を抜けて、入国審査へ。F-1ビザはvisitorの列にならぶ。今回は韓国のアシアナ航空を使って来ていて、乗客も韓国人の旅行客だと思っていたら、US citizen の列に並んでいる。American Born Koreanか。ここが、”ただいま”。

列は遅々として進まない。手続きが遅いのではなく、人が多いから。家族で休暇だろうか、列で待っている間も子どもに読み聞かせをするお父さんや、リタイア後の旅行を楽しむ夫婦らしき人たちもいる。

待っている間、とある匂いが鼻をかすめる。甘さと、華やかさのある、ティーンエイジャーの女の子が纏う香水のような、深呼吸したら鼻腔の上部分が痛くなるにおい。においは記憶と関連づけられると聞いたことがあるが、たしかに3年前のマディソンの記憶は蘇ったりする。ああ、これこれ。このにおい。と、変に納得していたら入国審査は自分の番になった。


日本から預けた荷物はきちんと2つ、baggage claimに置いてあった。100 Lの黒いスーツケースと黄色のバックパック。スーツケースの方に巻きつけていた黄色の目印のベルトがなくなっている。またか。以前サンディエゴに旅行したときも、スーツケースをへこまされた。今回はベルトの紛失。はいはいこんなもんねと思い、$6払って台車を借りる。

yellow cabに乗って宿泊先へ。運転手はインド系。無言の車内はメーターの赤い文字だけ視界の隅で変形している。フィリピンはタクシーがぼったくりだけど、ニューヨークはそんなことないのね。チップも払ってさようなら。

時差ボケが酷くて、宿に着いてすぐ寝てしまった。夜にスーパーへ出かけて好きだったranchのドレッシングを見つけて購入。ガロンで売っている牛乳やまるまるの鶏肉、多様すぎるシリアルの箱たちに囲まれ、「久しぶり」と言われているような気もして、少し懐かしい。今日から5日間はtemporary housingなのでサンドイッチを作って空腹をしのごう。


飛行機はいつだって、時間と空間の感覚を歪ませる。まだPh.D.生活の現実味はないが、サンドイッチはしっかりranchの味がきいている。

Yuka in New York

A day in NY

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